2度目のHENRO TRAIL②  「遍路転がし」

燒山寺道の途中、浄蓮庵には巨大な一本杉を背にした大師像が。

 10月19日、12番札所燒山寺へ。

「遍路転がし」とは四国遍路の難所をいう言葉で、阿波の難所としては「一に燒山、二にお鶴、三に太龍」がある。

 四国遍路最大の難所は何と言っても燒山寺道だろう。寺は11番藤井寺から山を二つ越えたその先にある。二つめのピークにある浄蓮庵(標高745m)からは谷底の集落(標高400m)まで下り、そこから標高720mの燒山寺まで登り返すから、この登りが格別厳しく、合計1200mの登りとなる。

 急坂を登り切ればやがて燒山寺の山門が現れ、疲れ切った遍路を迎えてくれる。やっとたどり着けたという安心感・満足感に満たされる。

 焼山寺本堂から大師堂へ、順にお参りをして御朱印を頂いたら、今夜の宿「すだち庵」に向けての下り道となる。

燒山寺山門

燒山寺からの下り道にある杖杉庵は、四国遍路の元祖といわれる衛門三郎ゆかりの地で、庵の脇には弘法大師に許しを請う衛門三郎の像が建てられている。

 昨日に続き、今夜の宿すだち庵でも宿泊客の半数が外国人だった。聞けば今年はお遍路さんが多く、数日先の宿まで塞がって予約が取れないのだとか。そのため、行動範囲に制約の多い歩き遍路の中には遍路を中断した者が多いという。慌てて私も翌日の宿を17番井戸寺一帯で探したのだが、予約は取れなかった。

 結局、翌20日はすだち庵から15kmほど先、山を下って鮎喰川のほとりに出た辺りに東屋のある駐車場があった。県道脇ではないから交通量も少ないだろうと、ここをこの日の宿とすることに。

 昨年の遍路では、日和佐の道の駅にテント泊したのだが、トイレに立ち寄る車にヘッドライトで照らされるし、国道を走る車の騒音もひどい。国道の向かいにはコンビニがあって、深夜まで店の前にたむろする若者の声も加わってほとんど眠れず。 

 歳を取るごとに眠りは浅くなるし、トイレに何度も起きなければならない。昨年の経験に懲りて、道の駅にはテントを張らない決心をしていたのだが。

 結局昨年と同じ事態。甘かった。 

徳島市一宮町遍路道脇にあった石造物、一石に刻まれた六地蔵が。

 翌21日はつらい歩きとなった。せめてもの救いは13番大日寺から17番井戸寺まで、数㎞間隔で札所が並ぶから気を紛らわす事が出来たが、その先18番恩山寺徳島市街の先にあり、その距離19km。今夜はゆっくり休める宿を何とか確保しようと探したら、運良く19番立江寺の宿坊が空いていた。

歩くことをあきらめ、井戸寺口のバス停から徳島市街をワープして恩山寺へ。

井戸寺口バス停脇にあった古い道しるべ。「右 おんさんし(恩山寺)」とある

 この泊まる立江寺宿坊。宿坊は初めての経験で、どんな料理がでるのか興味津々だったのだが、一般の旅館と変わらず。しかも大満足の料理だった。そして爆睡の一夜となった。 

 翌朝はご住職の朝のお勤めに参加。朗々として本堂に響き渡る読経は声楽のように思えた。

  (続く)