樽前山に登って溶岩ドームをながめた後、十勝を経て大雪山の東、士幌町にある「幌加温泉 湯元鹿の谷」を目指した。
人里離れた山奥にポツンとあって、これぞ秘湯という一軒宿。ここでは泉質の異なる三種類の湯が楽しめる。実は何年か前に立ち寄って惚れ込み、是非再訪したいと思っていた温泉だ。
ところが訪ねた日は休業していた。なんとまあ残念なこと。
やむを得ず、地図を取り出して近くの温泉を探してみると、幌加温泉から北東の方向にごく小さな字で
「滝ノ湯温泉」
そのすぐ脇に「塩別温泉」が見えた。
所在地は北見市留辺蘂町滝の湯。何度か北海道の温泉・野湯を訪ねて廻ったことがあるが、この温泉名に記憶は無い。
1時間ほど車を走らせると、道路脇に「塩別つるつる温泉」の看板が。その手前にあるはずの滝ノ湯温泉を目指して左折すると、『滝の湯センター夢風泉」の建物(公衆浴場)、その奥に芝生を張ったパークゴルフ場があり、脇には足湯が設置されていた。
ここが滝ノ湯温泉らしい。
まず、足湯へ。
無色透明の湯だが、ほんのりと硫黄の香りもする。案内板にはアルカリ性単純温泉とある。なるほど、足を浸してみるとまとわりつくようなヌルヌルの、いわゆる美肌の湯だ。
長々と足湯を楽しんだ後、「夢風泉」へ。やはりヌルヌルの湯でうっすらと白濁しているようだ。屋内だけに硫黄臭はいくらか強い。驚いたのはその湯量で、絶えず浴槽からあふれ出る湯量にびっくり。
同じタイプの湯で、記憶に残っているのは熊本県小国町にある寺尾野温泉薬師湯。小国町寺尾野地区の方たちで管理されているごく小さな共同浴場だ。この湯が大好きで、九州に出掛けたらかならずというほど立ち寄っていた。
まさか、たまたま訪れた湯がこんないい湯だったとは。
さすが、北海道。
この温泉の前には大正9年、原野開拓促進のため、郵便と運輸機能をはたす駅逓、それに移住者の相談所、旅人の休憩・宿泊所として設置された建物が保存されていた。
洋風でモダンな外観なのだが、内部は畳敷きの部屋もある。一番驚いたのは建物の内に井戸やトイレがあったこと。中国地方の古い民家なら、住居の外にあるのが普通だが、冬の寒さがそれだけ厳しいということなのか。
この旅で立ち寄った温泉はもう一つ。大雪山旭岳の北側山腹にある中岳温泉。訪ねるには短くても2時間ほどの山歩きをしなければたどり着けない温泉だ。
旭岳温泉からケーブルカーで姿見駅へ。ここから旭岳に登り、間宮岳をへて中岳温泉へ向かった。
温泉とはいっても、標高1800mの山中にある野湯で、登山者が入れ替わり立ち替わり、足湯にして休息していた。
実は、そのあとさらに豪華なお土産が。温泉の先、裾合平には雄大なお花畑が広がっていた。