HENRO TRAILを歩いた ⑩ 

 14日目、愛媛県最後の札所65番三角寺に参詣し、県境の境目峠を越えると吉野川の上流域にあたる徳島県三好市池田町。次の66番雲辺寺は四国八十八カ所霊場としては香川県最初の札所なのだが、その所在地が徳島県三好市池田町と知って、びっくり。

 今夜の宿は雲辺寺登り口に近い民宿岡田。94才とご高齢のご主人が、この日合計四人の宿泊客の洗濯物の世話や食事の給仕など、若い者と変わらない働きっぷり。食事の後には四国遍路の難所雲辺寺越えの道について、手製の案内図を配布して説明してくださった。その上翌朝には山越えになるからと「お接待」の昼食弁当まで。お世話になりました。

 

 15日目、目指す雲辺寺は標高910mと八十八カ所の中で最も高く、その名のように奥山の雲の湧き出る辺りにある。参拝した11月8日、寺は紅葉の真っ盛り、寺からの下り道は紅葉の落ち葉に埋もれた心地よい遍路道となっていた。

 

 その後66番太興寺に参拝し、善根宿銭形に宿泊。善根宿や通夜堂では火気厳禁となっていることが多いから、近くにあった遍路休憩所に移動し手持ちの食料で軽い夕食。

 早々に眠りにつこうとした頃、ご主人からお菓子の差し入れ。ありがとうございました。お世話になりました。

 

 16日目は4ヵ寺に参拝。

 最初に訪れた68番神恵院と69番観音寺は一つの敷地内に2つの寺が同居する不思議な寺。納経所も一つ。その上ご住職も一人だけとどこかで聞いていたにわかには信じにくく、御朱印を頂くときそのことを訊ねたら、

「そうです」  

何の不思議もないという雰囲気の返答が返ってきた。なるほど。

 

観音寺裏手の砂浜には「寛永通宝」と描かれた巨大な砂型(「銭形」)がある。

 71番の弥谷いやたに寺は標高は230mとさほど高くはないのだが、切り立った岩山に建つ寺で、死霊の行く山と信じられていたという。

 弥谷山は古来より霊山(弥山)として信仰されたといわれ、日本三大霊場(恐山・臼杵磨崖仏・弥谷山)の一つに数えられたといわれます。(弥谷寺公式HPより)

 この日泊るつもりだった「ふれあいパークみの」には団体が入って満室だと断られていた。他に当てもないから、弥谷寺参拝の後、フロントで「キャンセルなどはないか」と訊ねたところ「素泊まりでよければ」。無論異存は無い。ダメなら隣接する道の駅で野宿だった。

 

 

 17日目、ふれあいパークみのを薄暗いうちに出発。72番曼荼羅寺に向かう「讃岐遍路道」を下っていくと、ため池に遠景の山が映り込む幻想的な朝焼がー

ため池に映り込む朝焼け

 この日は72番曼荼羅寺から78番郷照寺までの7ヵ寺に参拝。何と言ってもメインイベントは弘法大師生誕の地という75番善通寺

 総本山善通寺は「屏風浦五岳山誕生院善通寺」と号する。誕生院の院号弘法大師の誕生の地であることによる。京都の東寺、和歌山の高野山とならぶ弘法大師三大霊跡のひとつに数えられる。(善通寺HPより)

 寺内では参拝者のグループに向けて、善通寺の僧侶(らしい)による解説がおこなわれていた。私も紛れこんでしばらくお話に聞き入った。

 聞いているうちに思いついたのだが、香川県には八十八カ所霊場と同じ名の市が2つもある(善通寺・観音寺)。四国八十八カ所霊場の寺は24カ所。どの県も似たような数ではあるが、面積当たりで言えば香川が圧倒的だ(因みに各県の数は、徳島23、高知16、愛媛26、香川23)。

 また高松市一帯で一層感じたことだが、無人・有人の遍路休憩所が至る所にあって茶菓のお接待が行われていたことなど、香川は「八十八カ所愛」「遍路愛」の高い県のように感じる。

 今夜は宇多津の善根宿うたんぐら。お世話になりました。

 宇多津といえば、香川には似たような地名がいっぱい。宇多津ー志、何か地名しり取り遊びのような。

 (続く)