備中町平川は備後国境に面した高原の村であって、居館は平川の中心集落下郷に残る。標高は470m。南に向けて下降する山裾の緩斜面に斬り込んで造成されたものだ。敷地は奥行き70m、居館前面の幅が65m、居館背後の幅が55mのほぼ等脚台形をなす。背後には削り出しの土塁と幅7mほどの空堀があるが、両側面に回り込んでやがて途切れる。
居館跡には近年まで民家があり、今は移転したが南東隅に郵便局もあった。居館前面は後世のものと思われるが、高さ1~2m程度、白い結晶質石灰岩(いわゆる「小米石」)の石垣が築かれている(写真)。
ただ、文化10年の「平川村明細帳」(備中町史史料編所収)に記載された屋敷の規模は二十三間・二十間。前面の石垣部分が後世の改修に伴って拡張されたものかもしれないが、少なくとも居館背後の土塁・空堀部分は原状を止めているものと思われる。記載される居館の規模が居館背後の東西幅にも達しないのは何故だろう。